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Photo by Kondo Atsushi
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「1つずつは飛び抜けた力が無くても、掛け合わさった瞬間に希少な存在になる」
髙田春奈 #3
今回のアチーバーは、公益財団法人日本女子プロサッカーリーグ(WEリーグ)代表理事長(チェア)の髙田春奈さんです。髙田さんは、長崎県佐世保市出身で、国際基督教大卒業後にソニーに就職。人事を中心にキャリアをスタートさせると、2005年にはジャパネットの人事、コンサルティングを担う「ジャパネットソーシャルキャピタル」を設立しました。会社の経営と平行し、2008年には東京大学経済学部、2015年には同教育学部を卒業するなど、新たなフィールドへの挑戦も続けてきました。2020年にはサッカーJ2のV・ファーレン長崎の社長、2022年1月には公益財団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)の理事に就任と、スポーツ界にも活躍の場を広げている髙田さん。「目標はなくてもいい」―。点と点をつなげるように切り開いてきたキャリアの裏側に宿る思いとは何なのか。その「WORD」に、未来を切り開くヒントがあります。今回は全3回連載の1回目です。
Q:このTHE WORDWAYは「昨日の壁を超え続ける大人を増やす」というテーマを掲げているのですが、「自分が置かれた状況に不満」「自分の強みが分からない」といった悩みを持つ読者の方は少なくありません。そこから脱却し、ポジティブに自分と向き合うには、どのような考え方が必要でしょうか?
例えば広告でもクリエイティブな仕事など専門的な領域にいると、どうしてもそこを伸ばしていくことが大事みたいになっていくと思うのですが、そこは競争がすごく激しいじゃないですか。分かりやすい専門能力がなくても、「希少価値」がすごく大事だと思っていて、サッカーもできて、簿記もできて、キャリアコンサルティングの資格を持ってますのような掛け合わせであれば、「自分しかいないな」と。1つずつはたいしたもので無くても、3つが掛け合わさった瞬間、一気に希少になったりするので、そういう意味で確固たる能力はなくてもいいと思います。
Q:他人と比べて秀でているかではなく、自分はこれができるというものを探していけばいいと?
評価する必要はないですが、同時に大切なのは結果を出すことかなとも思います。例えば、スポーツでいえば、個の力が揃っているチームとそうじゃないチームが対戦した時に、チームワークで勝つケースもあります。それは確固たる強みはないけど、かけ合わせがうまくいっている。それは、そういう風にコーディネートしている存在がいたり、信頼できる人間的に素晴らしい監督がいたりとか、色んな要素があってそうなってると思うのです。つまり、個の力がなくても、結果を出したら文句は言われないのですよ。Q:髙田さんは明確な夢や目標がなくとも、その時その時の正しい判断を繰り返して成長してきたという話でしたが、組織のリーダーとして、1つのことだけを追い続けてきた人など、異なる価値観の人と思いを共有しようとする時に気をつけていることはありますか?
私は、本当に今、目の前のことをきちんと一生懸命やってくれているかが一番大事だと思っているので、例えば「サッカーだけを一生懸命やってきました」という人はむしろ素晴らしいし、逆に打算的に「これぐらいやっとけばいいかな」っていう人や、「自分が将来こうなりたいから、とりあえずここにいます」っていう人はすごく苦手です。その人がどうやったらこの目の前の仕事を楽しいと打ち込んでくれるようになるかを常に考えますね。Q:THE WORDWAYではアチーバーの方に、自分を作った言葉、大切にしている言葉を聞いています。髙田さんにとって、特別な言葉や、印象的な言葉があれば教えてください。
期待されているものとは違うかもしれないのですが、私が研究の中で扱ったのが、ハンナ・アーレントっていう女性の政治思想家です。彼女はユダヤ系のドイツ生まれで、ナチスドイツの時代にフランスに亡命して、その後アメリカでずっと執筆活動した思想家なんですけど、彼女は自分がユダヤにルーツがあるにも関わらず、ナチスドイツに対して、上の人に指示されて組織の中で正しいと思うことをやった「凡庸な悪」という言葉で表現した人です。凡庸な悪っていうのは、あまり良い言葉ではないかもしれないんですけど、人の中にはそういった悪いことをしようと思ってたわけじゃなく、ただ組織の中で言われたことをやっていただけ。その中では正しいと言われたことをやっていただけで、悪いことをしてしまうっていうことが起こりうると。だからこそ、組織の中の価値基準にとらわれないことがすごく大事だなとも思えたし、残虐なことをした人をただ恨むだけではなくて、「誰にでもそういう悪の部分がある」と常に考えておくことが重要なのかなと思います。初めてその言葉に出会った時に心を動かされましたし、ずっと大事にしてることですね。
Q:髙田さんは多様性や他者視点といったことを強く意識されていると思うのですが、それはその言葉がきっかけですか?
そうだと思います。多様性と言うと、みんな違っていいみたいな感じなのですが、やはり異なる他者と人は生きているのだという大前提を常に持ち続けて生きること。それを面倒くさいじゃなくて、それが人生を豊かにしていると思えることが大切だと思っています。だからこそ、サッカーにおいても、外国人だからとか、女性だからとか、トランスジェンダーだからとか、そんなことで人の価値を決めることではないというのは原点にあると思いますね。
貴重な話をありがとうございました。最後に、今後の髙田さんが見据えているものを教えてください。
本当にまだ漠然としてるのですが、やはり多様な人が多様であることを認め合って、みんなで平和に生きられる世界にしていくということが、今も達成したいことだと思っています。今現在でいえば、やっぱりWEリーグがもっとメジャーになって認知度を上げて、WEリーグが作っている多様な社会の価値を、より多くの人に知ってほしいですね。Q:女子サッカーのリーダーとして、次世代に伝えていきたいことや、スポーツを通して実現したい未来はありますか?
いろんな人たちが身近な心の揺さぶられや、人と人との繋がりの価値を認められるようになったら、もっと楽に幸せに生きられるのではないかなと思うので、そういう子供たちが増やせたらいいなって。一生懸命勉強することも大事ですが、そのことによって外で遊んだり、友達とサッカーをしたりっていう時間が削られることによって、失っているものもあると思うので、子供たちのそういう時間をもう少し大切にしてあげるっていう事を、皆がしてあげることができればと思いますね。
THE WORDWAYでは、読者から、アチーバーの記事を読んだ感想を募集しています。記事を読んだ感想、「昨日の自分を超える」トリガーになったこと、アチーバーの方々に届けたい思いなど、お送りください。いただいたメッセージは、編集部から、アチーバーご本人に届けさせていただきます! アチーバーに声を届けるPROFILE
- ◆髙田春奈(たかた・はるな)1977年(昭52)5月17日、長崎・佐世保市生まれ。国際基督教大を卒業後、ソニー(株)で4年半勤務し「(株)ジャパネットソーシャルキャピタル」」を設立。2008年に東京大学経済学部、2015年に東京大学教育学部を卒業。2020年1月にJ 2V・ファーレン長崎の社長に就任し、2022年3月にJリーグ理事に就任(現在は特任理事)。2022年9月に、公益社団法人日本女子プロサッカーリーグ(WEリーグ)の第2代理事長(チェア)就任が発表された。
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