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Photo by Kondo Atsushi
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「チーム全員でアウトプットして作った目標なら、全員でそこに向かっていける」
大神雄子 #3
今回のアチーバーは、元バスケットボール女子日本代表で、Wリーグ・トヨタ自動車アンテロープスのヘッドコーチの大神雄子さんです。大神さんは8歳の時に父のコーチ留学先の米国で本格的にバスケットボールを始め、帰国後は愛知の強豪・名古屋短期大学付高(現・桜花学園高)に進学。司令塔として3年間で7度の日本一に貢献すると、07年には日本人初のプロ契約選手となりました。08年に、米WNBAのフェニックス・マーキュリーの開幕ロースターを獲得。日本人2人目のWNBAプレーヤーとなるなど世界を舞台に活躍し、今年6月には日本人3人目となる国際バスケットボール連盟の殿堂入りを果たしました。壁を乗り越える原動力は「エネルギーとパッション」。情熱の燃やし方、夢を引き寄せる「逆算」のメンタリティーとは。今回は、全3回連載の3回目です。
Q:今回は組織作り、チーム作りについて聞かせて頂きます。大神さんは、現役引退後に筑波大の大学院に通ってコーチングを学ばれたそうですが、何を求めての選択だったのしょうか。
私の長所はパッションとエナジーだと自分でも思っていますが、指導者、教育者とかそういう風になった時には、より客観的に物事を話せるとか、理論的にちゃんと説明ができることがすごく大事だと思ったんです。その時にはやっぱり直感を生むための経験と知識だけじゃなくて、学問という意味でのコーチングの勉強をする必要があるなと思ったのが1つきっかけです。Q:実際に今ヘッドコーチを担当して活動してる中で、その経験値は役立っていますか?
大きいですね。今はもちろんヘッドコーチですけど、マネジメントももちろん大事なので、プレゼンの資料ももちろん作りますし、コーチングでも、身体表現とか言語技術だとか、実戦でのコーチング実践だったり、学問として学んで、しっかりインプットして、また今現場でアウトプットしてる今の状況ですので、すごくありがたい環境だと思います。Q:10月から新たなシーズンが始まります。強いチームを目指す上で、大神さんがリーダーとして大事にしていることを教えてください。
チームとしては全員で成長するチームでありたいと思っています。なので、選手だけにそれを求めるのではなくて、コーチもスタッフもそうですし、このチームが成長していく為に、改善して、より良くするためにどうしていくのかっていうのを全員で考えて、行動にしていく必要があるのかなと思っています。私個人としては、「常に上機嫌で接する」ということが自分のコーチングフィロソフィーの中でも大事にしてることなので、自分の機嫌は自分で取るということです。リーダーとして、こうやって選手の前で話をするのに、今日は疲れてるからもう顔に出るとかそういうことではなく、自分の機嫌は自分で取るって言うところを心がけています。Q:ビジネスの世界でも上司、部下という関係の中で組織が成り立っています。育成や、指導法で悩んでいる人も少なくないと思うのですが、どういう声掛けを意識すれば、お互いが成長していく雰囲気を作れるのでしょうか。
簡単に言えば、「私」じゃなくて「私たち」っていうところだと思います。なので、ミーティング1つにしてもコーチが一方的に話すだけではなくて、例えばミーティングの中で私たちが話をした内容で、選手でグループワークをしてもらってアウトプットする時間を作って、私たちにも気づくきっかけをもらうとか、時には選手が企画したチームアクティビティの中で全員でそのグループワークをやるとか、そういう風な時間は、練習よりも大事なことかなと私は思っています。Q:技術にフォーカスするばかりではなく、コミュニケーションの質を上げることが大事だと?
私は、ある時から「バスケットボールは人生の一部なんだ」と思うようになったんです。人としてどうあるべきかっていうのを問うことがバスケットボール選手としての成長にもつながると。優勝するため、この結果目標に対して自分たちはどういう行動目標を持つ必要があるかも、「これはね、あれね」と最初から答えを出すものではなく、全員で作っていく。全員で考えてアウトプットしてチームを作れば、全員がそこに向かっていけるし、それが成長かなと思っています。自分たちにしかできないものが、実は成長なんじゃないかなと感じますし、正解を探しに行くというより、自分たちの上を探すことが成長なんだと思いますね。Q:リーダーとして「自分で自分の機嫌を取る」というのはどのような考え方なのですか?
これはヘッドコーチになった時から絶対に継続しようとずっと思っていることで、反面教師かもしれないですけど、私が見てきたコーチの中でも、機嫌で選手に当たってくるとか、私もそういう経験はあるんです。そのぐらい選手はコーチを見ているってことじゃないですか。なので、多分、私も私の表情1つ、私の言葉1つ、その機嫌1つを選手は私以上に見てるし、見られている。なので、自分の機嫌はしっかり自分で取ろうという考え方ができたと思います。Q:自分の機嫌をコントロールすることは簡単ではありません。大神さんが意識していることや、アドバイスがあればお願いしたいのですが。
私がやっている、自分の機嫌を自分で取るための1つの方法は、いい意味で自分の趣味を見つけることです。24時間の、24×7のこの時間は全員平等にあるわけで、仕事と仕事が終わった後のオフコートの中で面白くないことをやるより、自分が好きなことをやる方が、自分の気持ちが楽しくなるシチュエーションが24時間の中で多くなるし、そういうマインドセットは生まれやすくなる。いろんなものに対して興味を持って、自分の好きなことを探すことにフォーカスすることで、もしかしたら自然と自分の機嫌が取れているのかもしれないですね。Q:スイッチを切り替える手段を用意しておくことが大事なのですね。
そう思います。私の場合は、最近だとサウナもそうですし、車、ドライブもそうです。ドライブに行く時は私のパワースポットでもある空港に行くんです。旅に行く人が空港に集まるから、エネルギーがいっぱい溢れてる場所だなと。その次に見つけた趣味は、それを写真に収めることなんです。最初は車、それを今度パワースポットの空港に行く、そしたら今度はそれだけじゃなくて、それを撮ることが好きになった。もちろん友達と会って色んな話をするっていうのも良いと思いますし、それは人それぞれだと思うんで。メリハリは絶対に大事ですし、そこは「バスケットボールは人生のパーツの1つ」というところにも繋がるのかなと思っています。パーツの1つだと思えれば、他の部分のところのボリュームさえよければ、バスケットボールに対しての情熱の注ぎ方ももっと良くなるんじゃないかなと思いますね。貴重なお話をありがとうございます。THE WORD WAYは言葉を大事にしているメディアです。大神さんが大事にしている言葉や、自分の人生を作った言葉などがあれば教えてください。
たくさんあるんですが、両親に言われた「自分で決めなさい、あなたの人生なんだから」という言葉は、自分の中で1つ大事にしています。何をするにしても決断は自分でさせてもらってきましたし、それは「自分が決断したことで、得たものに対して自分でちゃんと責任を取りなさい」って言ってることと同じですから。そういう考え方を生んでくれた両親のその言葉は大きかったかなと思います。やっぱり身近にいる父親の背中をずっと見て育ってきましたし、尊敬してるからこその言葉はすごく大きく、深く、自分の中に残ってますね。Q:インタビューを通して、大神さんは言葉の力をすごく考えて、行動に移しているという印象を受けました。
そうかもしれないですね。その中でも私は、やっぱり挨拶とお礼っていう本当に一番大事なところだと思っているんです。私が1人でアメリカに挑戦した時や、中国に挑戦した時も、日本代表でたくさんの国に行った時にも、一番最初に覚える言葉って「こんにちは」と「ありがとう」なんですよ。いろんな国に行って、他の言葉は喋れないですけれども、「ニーハオ」「シェイシェイ」は言えるし、「ハロー」と「サンキュー」は言えるんです。ってことは一番大事な言葉は、挨拶とお礼。「ごめんなさい」より「ありがとう」なんだろうなと感じています。それは日本でも同じで、挨拶は上だからするとかではなくて、気づいた人がすればいい。「ごめんね」「ごめんなさい」っていうよりは「ありがとね」「ありがとう」って言うことを大事にしたいと思っています。Q:最後に、大神さんの今後の夢を聞かせてください。
私はバスケットボールが好きで、選手でも35歳までプレーさせてもらって、(引退して)今6年目でヘッドコーチっていうポジションをやらせてもらっています。選手、指導者ときたので、もちろんマネジメントの部分もですよね。選手だけでは関われないですから、そういう色々な視点からバスケットボールを見られるように、次はマネジメントの勉強をしなきゃいけないなと思いますし、本当にいろんな形でバスケットボールに携わっていきたいなというのが自分の最終的なゴールですね。THE WORDWAYでは、読者から、アチーバーの記事を読んだ感想を募集しています。記事を読んだ感想、「昨日の自分を超える」トリガーになったこと、アチーバーの方々に届けたい思いなど、お送りください。いただいたメッセージは、編集部から、アチーバーご本人に届けさせていただきます! アチーバーに声を届けるPROFILE
- ◆大神雄子(おおが・ゆうこ)1982年10月17日生まれ、山形県出身。8歳の時に、バスケットボールの指導者の父がコーチ留学したロサンゼルスでプレーを始める。名古屋短期大学付高(現・桜花学園高)に進学し、3年間で7度の日本一となった。2001年にジャパンエナジーJOMOサンフラワーズ(現JX-ENEOS)に入団し、07年に日本人初のプロ契約選手となる。同チームで9度のWリーグ優勝、7度の全日本優勝に貢献した。08年に米WNBAのフェニックス・マーキュリーのキャンプに参加し、開幕ロースターを獲得。日本人2人目のWNBAプレーヤーとなる。13年には中国女子リーグの山西興瑞に移籍し、主力として優勝を経験した。2018年に現役引退後は、トヨタ自動車でコーチを務め、2022年からヘッドコーチ。23年に日本人として3人目の国際バスケットボール連盟(FIBA)殿堂入りを果たす。
HOW TO
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