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Photo by Kondo Atsushi
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「対立的な意見も自分のため。大切なのは、どう変換するか」
鈴木 啓太 #3
今回のアチーバーは、サッカー元日本代表の鈴木啓太さんです。現役時代は、広い視野とリーダーシップを武器に日本代表としても活躍。J1浦和レッズのリーグ優勝、主将としてACLチャンピオンズリーグ優勝にも貢献されました。ファンを驚かせたのは、2015年。引退を機に腸内フローラに関するコンディショニングサポート事業を展開する『AuB(オーブ)株式会社』を設立し、起業家の道へ進まれました。大切にしているのは、「キャリア=人生」という考え方。ビジネスとサッカーで培った未来の切り開き方、挑戦を前にした「恐怖心」との向き合い方を、鈴木さんの「WORD」でお届けします。今回は全3回連載の3回目です。
Q:鈴木さんは、自分の本質にとことん向き合うストイックさと同時に、周囲の声に耳を傾けて、必要なものは取り入れる柔軟さも大切にしているように感じます。サッカーもビジネスも、人との連携が不可欠ですが、どのように意識していますか?
僕は、自分の中だけで答えを見つけられるタイプじゃなくて、人との対話の中で「あ、そのアイデアいいよね」とか、「自分の持ってるものとここを組み合わせたらよくなるな」って考えるんです。天才肌ではないので、自分の中だけでイノベーションを起こすことができない。でも、それをここを掛け合わせたら面白そうとか、人からのヒントで、会社をやろうともなったんですよ。自分のきちんとしたバックボーンがあることが大前提だと思いますが、人からヒントを得ることが多いです。発明はできないですね、僕は。Q:人からヒントを得るために意識していることとはありますか?
まず自分がどういう人間で、どういう思考であるかっていうことをしっかりと分かってもらうことですね。そのうえで、自分のことも話しますけど、周りの人達がどんな考えなのかなっていうのも興味があるので、話を聞く。どのように人が考えてるかを知る中で結びつくこともありますし、結びつかない対立的な意見でも、自分の考えがクリアになってくこともあるじゃないですか。だから他者との会話っていうのは、すべて自分のためになると言うか。要はどのように変換するかだと思うんです。Q:他者のマイナスの考えも、自分にとってプラスに変えていくと?
たとえば、僕はサッカーが1番だと思っていたんです。でも、当然ですが世の中ではサッカーが1番じゃないんですよ。じゃあ、どうすればサッカーをもっと好きになってもらえるんだろうって考えるじゃないですか。でも、「サッカーってこんな素晴らしいんだよ」って言ってるだけではダメで、外から見たサッカー界って何がその興味をそそられないんだろうって。他者を知らない限り、その答えを知ることは難しいですよね。自分のことだけだったらいいんですけど、社会の中に組み込まれていくってことを考えると、他者を知ることはものすごく大事だなと思いますね。Q:その考え方は企業のトップとしても生きていますか?
ある人に、「自分にとって耳障りなことを言ってくれる人を、必ず近くに1人は置きなさい」ってアドバイスをもらったことがあるんです。「嫌だと思うかもしれないけど、絶対にそれは必要だよ」と。それはなぜかと言えば、いろんな見方がある中でそれを言ってくれる人は価値があるし、それが仮に間違っていたとしても、愛情を持ってちゃんと苦言を呈してくれる人、自分のためを思って言ってくれる人であれば、その人を安心させるために自分を成長させればいい。それって、つまりサッカーのサポーターなんですよ。僕はサッカーで、人生のほとんどを学びました。全部詰まってるんですよね、サッカーに。Q:サッカーには勝つという明確な「解」があると思いますが、一般社会の中では解が見つからないことも多く、それが不安やストレスになったりもします。ビジネスの世界での「解」について、鈴木さんはどのようにとらえていますか?
1つの考え方としては、何か明確な目標を立てて、達成できるかという勝ち負けを作ることはあると思います。でも、もっと大きな枠で考えると、サッカーもサポーターにとっては、勝ち負けじゃないんですよ。勝ちも大事なんですけど本当は、戦ってる姿が見たいんですね。勝っても戦ってなかったら、ノーなんですよ。そう考えると、サッカーも勝ち負けじゃなくて、「戦う」というアバウトなもので、一般社会の「解がない」っていうところ、目に見えないものだったり、数値で表せないものという意味では一緒なんだと思うんです。サッカーは分かりやすいけど、社会ではわかりにくい。でも、本質的に言うとサッカーも実は分かりにくいんですよ。だから小さい目標設定をすることで、分かりやすく整理できるんじゃないかなと僕は思っています。Q:「結果」が必ずしも解でないケースもあると?
これ、サポーターと話をしていて、気づいたんです。僕は勝てばいいと思っていたんですよ。勝つのが全てだろうと。そしたら、サポーターから言われたんです。「分かってないな、啓太は」って。それで、答えが知りたいから「じゃあ求めるもの何なの?」ってサポーターにいろいろ聞いていくじゃないですか。そしたら、「美しいサッカーを見たい」とか「勝つサッカーが見たい」とか出てくるんですけど、ほぼ全員が「戦う姿を見たい」って言ったんです。「美しいサッカーが見たい。でも美しいけど戦ってないサッカーは美しくない」と。これ、めちゃくちゃ面白いなと思って。だから浦和レッズが強くて、結果を出して、お客さんがいっぱいいたっていうのは、ただ強かったからじゃないんです。みんな戦う集団だったからなんです。社長も選手も、みんなそうなんですよ。戦ってる姿をみんな見たいんですよね。Q:THE WORDWAYでは、ユーザーからアチーバーにメッセージを届けるフォームがあるのですが、大きな仕事や、高い壁を前にしたときに結果を想像して「不安」を感じるという声が少なくありません。そういった方に、考え方や行動の面でアドバイスはありませんか?
僕がサッカーで学んで、これ良い対処法だなと思ったのは、自分が不安だったり恐怖を感じていることを受け入れて、それを自分が認識することから始めるということです。まず自分は恐れてるんだ、自分は怖いんだなって。じゃあ、その不安や恐怖を感じないようにするためには、何を作ればいいのかなと、次はゴール設定をするんですよ。それがあれば、不安とか恐怖がなくなるゴールです。あとは、それを順にクリアしていけばいいだけなんです。一気に不安がなくなることはないので、認識して、じゃあその恐怖がどうやったらなくなるのかっていう理想的な解を作って、あとはそこに向けて淡々とやってくだけ。そうすれば、その不安と恐怖はなくなりますよね。不安と恐怖が「課題」に変わるんですよ。その課題をクリアしていけばいいだけになるんです。この問いが間違っていると、正解にたどり着かないじゃないですか。だから自分に正しい問いをしてあげるっていう事が大事かなと思いますね。Q:何が不安かをスタート地点に、何があればその不安がなくなるかをゴール地点にすると?
そうですね。不安とか恐怖って実態がないから怖いんですよ。サッカー選手で言えば、大切な試合になればナーバスになるじゃないですか。でも、大きな軸で考えると、恐怖とか不安を感じるのは、自分が人生をかけているからなんです。でも、人生をかけた大舞台に立てているって、めちゃくちゃ幸せなんですよ。自分の人生を賭けられるものが目の前にあって。それって子供の頃に夢見たものなんですよ。だから「夢叶ってんだよ」っていう話になるんですよね。そうやってサッカーでもそうですし、次のビジネスでもそうですし。生きるってきっとそういうことだと思うんで。何もなくて全部うまくいったら面白くないじゃないですか。Q:たくさんの素敵なWORDをありがとうございました。最後に鈴木さんのこれからの夢、目標を教えてください。
最高に楽しい人生を歩むことですね。何のために生まれたかって、幸せになることじゃないですか。僕はサッカーをやって、今ベンチャーをやって、後々クラブの経営とかやりたいですけど。それも全部幸せで、楽しい人生を歩みたいっていう手段だと思うんです。生きてるだけで楽しいですし、悩んでる時間なんてもったいない。あと何年生きるんだろうって考えれば、毎日が感謝で、こんなに楽しいことないでしょって。だから何やっても最高なんですよ。失敗したって最高なんですよ。失敗を恐れてチャレンジしないことの方が、もったいないなって。大丈夫です。大概のことは、「すみませんでした」って謝れば何とかなるんです(笑)。THE WORDWAYでは、読者から、アチーバーの記事を読んだ感想を募集しています。記事を読んだ感想、「昨日の自分を超える」トリガーになったこと、アチーバーの方々に届けたい思いなど、お送りください。いただいたメッセージは、編集部から、アチーバーご本人に届けさせていただきます! アチーバーに声を届けるPROFILE
- 鈴木 啓太(すずき・けいた)1981年7月8日静岡市生まれ。東海大翔洋高校卒業後にJリーグの浦和レッズに入団すると、06年にJ1優勝、07年にはAFCチャンピオンズリーグ優勝に貢献し、2年連続でJリーグベストイレブンを受賞。06年には日本代表に初選出され、28キャップ。15年に現役引退し、腸内フローラに関するコンディショニングサポート事業を展開している『AuB(オーブ)株式会社』の代表取締役を務める。
HOW TO
THE WORDWAYは、アチーバーの声を、文字と音声で届ける新しいスタイルのマガジンです。インタビュー記事の中にある「(スピーカーマーク)」をクリック/タップすることで、アチーバーが自身の声で紡いだ言葉を聞くことができます。 CATEGORY
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